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『ポストコロナの産業転換』【VOL0035】

 

皆さま、こんにちは。福岡県中小企業振興センターの林です。

 

つい先日、6月に経済産業省から出された『経済産業政策の新機軸~新たな産業政策への挑戦』という資料が話題となっています。

 

ポストコロナと中国の台頭など、世界の新たな政治経済環境を踏まえ、すでに欧米が動き出しているような国主導の産業政策へと舵を切る提言です。

 

このような提言が官庁から出てきたことにわたし自身は非常に驚いていますが、政府や他の省庁からの反応はまだないようで、実現するかは未知数です。

 

しかし、法人税の最低税率がG20の間で合意されるなど、民間主導の競争一辺倒だった経済環境に変化の兆しが見られる気がします。

 

ただし、これはかつて高度成長期のような護送船団方式に戻るということではないと思います。

 

上に触れた提言では安全保障上の物資としての半導体、カーボンニュートラルやデジタル革命といったキーワードが掲げられており、世界の情勢が大きく変化しているなかでの新たな政策であると考えるべきでしょう。

 

この変化は中小企業の経営にも影響を及ぼすでしょう。

 

たとえば、成長産業あるいはデジタル化への集中投資が行われる一方で、この流れに乗ることができない企業は“置いてけぼり”にされるということが考えられます。

 

カーボンニュートラルやレジリエンス(サプライチェーンの強靭化)というテーマで新たな事業機会が生まれる一方で、大量消費型、薄利多売型のビジネスに疑問が投げかけられるかもしれません。

 

欧米で行われている大型の財政出動はインフレを引き起こすでしょうから、様々な資源、原材料が高騰して経営を圧迫することも想定されます。

 

また、政治リスクとして中国製品の取引が難しくなるかもしれません。

 

ポストコロナの時代、各国とも産業政策の転換を急いでおり、望むと望まざるとにかかわらず、いずれは日本に、わたしたちの身の回りに及んでくるでしょう。

 

中小企業の経営者こそ今後の世の中の変化に敏感になり、常に備えをしておく必要があります。

 

そのためには今のうちに事業のムダをそぎ落とし、足腰を鍛えておくことが大切です。